企業が外部リソースを活用する手段として「請負契約」や「労働者派遣契約」が一般的ですが、その使い分けを誤ると「偽装請負(ぎそううけおい)」という違法行為に該当する恐れがあります。偽装請負は、労働法や派遣法に違反する重大な問題であり、発覚した場合には企業側に厳しい罰則や信用失墜のリスクが伴います。

この記事では、以下の点について詳しく解説します。
・偽装請負とは何か?
・なぜ問題になるのか?
・偽装請負と判断される典型例
・発覚時の罰則内容
・偽装請負を防ぐための実践的対策
1. 偽装請負とは?
偽装請負の定義
「偽装請負(ぎそううけおい)」とは、表面上は請負契約の形をとっていながら、実態としては労働者派遣に該当するような就労形態を意味します。これは、労働者派遣法および労働基準法に反する違法行為です。
具体的には、業務を委託した企業(元請け・発注者)が、委託先企業(下請け)の従業員に対して直接指示・命令を行うような形態がこれに該当します。
正しい「請負契約」との違い
本来の「請負契約」は、請負業者が自らの裁量で業務を遂行し、成果物の納品に対して報酬が支払われる契約形態です。発注者が直接作業員を指示・管理することはありません。一方、偽装請負では、発注者が現場の作業員に直接「いつ、どのように作業を行うか」を命令するなど、派遣に類似した実態が見られます。
請負契約・派遣契約・偽装請負の比較表
項目 |
請負契約 |
労働者派遣契約 |
偽装請負(違法) |
雇用関係 |
請負会社と労働者 |
派遣元会社と労働者 |
請負会社だが実態は派遣 |
指揮命令 |
請負会社が行う |
派遣先企業が行う |
発注者が直接指示(違法) |
報酬形態 |
成果物ベース |
労働時間ベース |
曖昧 or 労働時間ベース |
業務の成果 |
完成物の納品 |
労働の提供 |
労働力の提供が実態 |
合法性 |
合法 |
合法(要許可) |
違法 |
偽装請負の典型的な特徴
以下のような場合には、偽装請負と判断される可能性が高くなります。
-
発注者が現場に常駐し、日々の作業を直接指示している
-
作業員の出勤・退勤時間や休憩時間を発注者が管理している
-
業務マニュアルや服装などの規定が、発注者によって一方的に指定されている
-
成果物による報酬ではなく、作業時間に応じた支払いが行われている
-
請負会社の責任者が現場に不在で、実質的な管理が発注元にある
実例:偽装請負となったケース
・ケース①:IT企業の開発現場
A社はソフトウェア開発をB社に請負契約で依頼。B社のエンジニアがA社オフィスに常駐し、A社のPM(プロジェクトマネージャー)から日々タスク指示を受けて作業。成果物は毎日提出、作業時間ごとに報酬を支払っていた。→ 偽装請負と判断され、労働局から是正勧告。
・ケース②:製造業のライン作業
C社が製造ラインの一部をD社に請け負わせる形で委託。D社の作業員がC社の制服を着用し、C社の現場監督から直接作業の指示を受けていた。安全教育や勤怠管理もC社が実施していた。→ 労働者派遣とみなされ、D社に罰金処分。
2. 偽装請負が発覚した場合の罰則とリスク
まず、どのようなきっかけで偽装請負が発覚するのかを理解しておくことが重要です。
主な発覚経路:
-
労働者本人または内部告発による通報(労基署・労働局への申告)
-
労働基準監督署や公共職業安定所による立入調査
-
社外からのクレームや報道機関による調査
-
労働災害発生時の原因調査
-
派遣契約と誤認した労働者からの雇用申立て
法的な罰則・行政処分
偽装請負は、主に労働者派遣法違反または職業安定法違反として処分の対象になります。
■ 主な法律違反と罰則
法律名 |
違反内容 |
罰則・処分 |
労働者派遣法(第4条、40条の6など) |
無許可での実質派遣 |
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
職業安定法(第44条など) |
労働者供給事業の禁止違反 |
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
労働基準法 |
労働時間・賃金・指揮命令体制違反 |
是正勧告、指導、最悪の場合は送検 |
行政処分 |
違法派遣と認定された場合 |
業務改善命令、企業名公表、再発防止命令 など |
※違反の継続性・悪質性によっては刑事告発され、経営者個人にまで罰則が及ぶこともあります。
社会的・経営的リスク
■ 信用の低下と企業イメージへの影響
-
メディア報道やSNSによる炎上
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投資家・取引先からの信頼喪失
-
株価の下落(上場企業の場合)
-
採用活動への悪影響(内定辞退、応募減)
■ 公共契約・大手企業との取引停止
-
偽装請負があると、公共事業の入札資格停止
-
CSRやコンプライアンスを重視する大企業との取引契約打ち切り
■ 業務停止や廃業のリスク
-
業務改善命令に従わなかった場合、営業停止命令
-
社会的批判や訴訟リスクの高まりから、事業撤退や倒産に至るケースも
実例紹介:偽装請負による罰則の事例
実例①:製造業A社のケース
-
自動車部品製造の現場にて、請負契約で導入された労働者に対し、発注者が直接指揮。
-
労働局の調査で「実態は派遣」と認定。
-
A社に100万円の罰金、D社(請負先)は事業停止処分。
-
さらに5人の労働者が直接雇用を申し立て、訴訟に発展。
実例②:IT企業B社
-
請負契約で常駐開発を委託していたが、指示系統が実質的にB社にあった。
-
元請けB社が報道で取り上げられ、株価急落。
-
主要クライアントとの契約を複数失う結果に。
3. 偽装請負を防ぐための具体的な対策
偽装請負は、知らずに行ってしまうことが多い違法行為です。契約書上は請負でも、日々の運用で派遣的な働かせ方をしてしまえば、それだけで違法とみなされる可能性があります。そのため、企業は「形式」だけでなく「実態」を意識し、社内体制を根本から見直す必要があります。
契約書の適正化と業務範囲の明確化
対策内容:
-
請負契約書の記載事項を明確に
-
業務の「目的」「成果物」「作業場所」「納期」「報酬」を具体的に記載
-
「労働力の提供」にならないよう注意
ポイント:
-
成果物がない場合、「準委任契約」または「派遣契約」への見直しも検討
-
労務提供型の業務(コールセンター、工場ライン、IT常駐業務など)は要注意
社内教育・研修の実施
対策内容:
-
管理職・現場リーダー向けに偽装請負のリスク・法令教育を実施
-
毎年のコンプライアンス研修に請負・派遣の違いを組み込む
ポイント:
-
「誰が指揮命令を行っているか」が違法判断の最大ポイント
-
実務担当者がルールを知らなければ意味がない
研修内容例:
-
請負と派遣の違い
-
偽装請負が発覚した企業の事例
-
指示命令の範囲・注意点
実態監査・内部チェック体制の構築
対策内容:
-
定期的に契約内容と実態の整合性を確認する
-
現場でのヒアリングや書面調査を実施
チェックポイント例:
チェック項目 |
内容 |
契約書と業務内容の整合性 |
請負なのに作業指示していないか? |
指揮命令関係 |
誰が業務指示を出しているか? |
勤怠管理 |
発注元が出退勤管理していないか? |
服装・教育・備品管理 |
発注元の社員と区別されているか? |
手法:
-
内部監査部門による現場訪問
-
外部社労士や弁護士による監査・診断
専門家の活用と契約レビューの外部依頼
対策内容:
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労働法に詳しい社労士・弁護士に契約内容・運用を事前に相談
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曖昧なケースでは労働局に照会する
活用例:
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新しい業務委託を始める際の契約レビュー
-
請負と派遣の判断が微妙なケースでの第三者意見取得
-
コンプライアンス体制構築のサポート
偽装請負は、単なる契約上の問題ではなく、労働者派遣法や職業安定法に違反する重大な法令違反であり、企業にとっては刑事罰や行政処分、社会的信用の失墜、労働者からの直接雇用請求など、さまざまなリスクを引き起こす要因となります。特に近年では、実態に基づいて違法性が判断される傾向が強まっており、「請負契約を結んでいるから大丈夫」といった形式的な認識だけでは通用しません。偽装請負を防ぐためには、契約内容の明確化、現場での指揮命令系統の分離、勤怠や評価の適正な管理、内部監査の実施、そして社内教育の徹底といった多面的な対策が不可欠です。これらを継続的に実践し、外部専門家の力も借りながら運用体制を見直すことで、企業は法令順守とともに、持続的な信頼を社会から得ることができます。
著者: Trang Admin
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