1. 技術トレンドのグローバルな動き

AI・AIoT・IoTの拡大

たとえば、グローバルに見て「AI ＋ IoT（いわゆるAIoT）」市場は2024年時点で約1,714億ドルと推計され、2030年には8,968億ドルに到達する可能性があるとするレポートもあります。

また、IoT／AIoTの成長ペースとして、「2024から2030年にかけて年平均成長率（CAGR）が20％超」などというデータもあります。

つまり、物理空間（モノ）＋デジタル空間（データ・AI）がくっつく「Cyber‑Physical」な世界が、ますます当たり前になりつつあるわけです。 

5G／エッジコンピューティング／クラウドの進展

5G通信網の展開が進むことで、遅延が少なく、かつ大量のデバイスをつなぐIoT／AI環境が現実のものとなりつつあります。

クラウドやエッジをうまく使い分け、「どこでデータ処理をするか」「どこでAI判断をさせるか」が、ITアーキテクトの重要な検討事項になってきています。

グローバルな課題：格差・セキュリティ・人材

技術普及が加速する一方で、グローバルには「アクセスできる国／地域」と「そうではない国／地域」のギャップが生まれています。

また、IoT／AI環境では「セキュリティ」「プライバシー」「倫理」も同時に議論されており、これを軽視すると技術の恩恵を活かしにくくなる可能性があります。

2. 日本市場への影響

労働力・技術者の課題と機会

日本では少子高齢化が進み、IT／技術者の確保が難しくなっています。こうした中、AI・IoT・自動化技術を活用して「人手を補う」動きが加速しています。

そのため、日本国内のシステム開発や製造業において、「AIoTを使った自動異常検知」「リモート運用」「設備メンテナンスの予測化」といった案件が増えつつあります。

技術者にとっては、「コードを書く／保守する」だけでなく、「どう技術を活用して業務課題を解決するか」の視点がより重要になってきています。

オフショア／グローバル開発の変化

日本企業は、これまではコスト削減の観点から「オフショア開発」を活用してきましたが、今は「スキル」「スピード」「グローバル品質」を求めて、より戦略的なオフショア連携へ移行しつつあります。日本国内だけで完結する開発ではなく、グローバルにチームを配置し、リアルタイムで技術知見を共有する流れが強まっています。

つまり、日本の技術者／企業も「日本語だけ」「国内だけ」の枠を超えて、グローバルな視点を持って活動することが、ますます必要です。

技術トレンドを取り入れるための企業文化変革

技術トレンドを活用するには、「ツールを入れるだけ」「システムを更新するだけ」では十分ではありません。企業文化や業務プロセスそのものを再設計する必要があります。「技術をどう使って価値を出すか」を考える組織が、生き残り・成長する可能性が高くなっています。

エンジニアとしては、技術知識だけでなく「ビジネス理解」「ユーザー視点」「変化に対する柔軟性」が強みになります。

3. ベトナムの立ち位置と成長

若くてダイナミックな技術人材

ベトナムは人口構成が若く、IT人材育成に注力しており、技術者の学習意欲も高いため、グローバルなIT案件の受託先として急速に存在感を増しています。

特に、IoT／5G関連、市場開拓型サービス、スタートアップの技術基盤構築など、幅広い分野で活躍が期待されています。

技術トレンドへの適応度

例えば、ベトナムのIoT市場は、「2019‑2025年CAGR 約24％」という予測も出ています。 これは、日本企業が技術連携するうえでも注目すべき数字です。

また、ベトナム国内でもスマートホーム、スマートシティ、デジタル化への取り組みが進んでおり、グローバル技術を取り込む土壌が整いつつあります。

日本とベトナムの協業による相乗効果

日本側が持つ業務経験・品質管理・プロジェクトマネジメント力と、ベトナム側の若く伸びしろある技術者層を結びつけることで、グローバルな開発体制が可能になります。

エンジニア個人としても、日本語・英語・技術スキルという三軸を備えれば、ベトナムや日本、さらには第三国（ASEANなど）をまたぐプロジェクトに参画できる幅が広がります。

4. オフショアとグローバル開発の未来

技術トレンドは「単発で技術を取り入れる」から、「グローバルに分散し、協働し、価値を共創する」フェーズへと進化しています。

オフショア開発はかつて「コスト削減」が主目的でしたが、今後は「専門技術・新技術の早期導入」「文化・言語を超えたチームづくり」「品質とスピード両立」がキードライバーです。

そのためにはエンジニア自身が「グローバルなコミュニケーション能力」「文化理解」「最新技術キャッチアップ」というスキルを意識的に磨く必要があります。

また、企業としても「オフショア先をただの作業部隊と捉える」のではなく、「戦略的パートナー」「技術イノベーションを共に創る場」として再設計する必要があります。

5. エンジニアに求められる新しいスキルセット

以下のようなスキルが、これからのエンジニアにとって重要になります。

技術スキル（ハードスキル）

 ・AI／機械学習の基礎理解

 ・IoT／AIoT／エッジコンピューティングの知識

（例：センサーデータの取得・処理、リアルタイム分析）

・クラウド／サーバーレスアーキテクチャ／マイクロサービス

 ・サイバーセキュリティ・データガバナンス・プライバシー対応

ソフトスキル（ヒューマンスキル）

 ・国際チーム（日本・ベトナム・多国籍）との協働コミュニケーション

 ・ビジネスを理解した技術提案力（ただ作るだけではなく、価値を出す）

 ・継続学習力・変化適応力（技術の移り変わりが早いため）

・多言語力（日本語・英語、可能であればベトナム語理解もプラス）

エンジニアとして「技術を扱える」だけでなく、「技術×価値を創造できる人材」がこれからのグローバル市場で活躍します。

6. 長期的な展望とアドバイス

技術トレンドは「流行」ではなく、構造変革のサインです。たとえば、AI＋IoTの融合やクラウド＋エッジの拡大は、産業構造・働き方・国際協働のあり方を根本から変えつつあります。

日本とベトナムという環境を生かすなら、 「グローバルな視点」＋「ローカルな強み」 の組み合わせが重要です。

・日本：品質管理力、業務経験、先進市場知見

・ベトナム：技術人材、学びの早さ、コスト競争力

これを掛け算で活かせるエンジニア・チームが強みを持ちます。

経営・マネジメント視点から言えば、技術を導入するだけでなく、組織文化・業務プロセス・人材育成を同時に考えることが不可欠です。

エンジニア個人としては、「専門技術を深める」ことと「広い視野を持つ」ことの両輪が鍵です。片方に偏ると、流れの速い技術市場では置いていかれる恐れがあります。

最後に、技術はあくまで“手段”であり、“目的”ではありません。つまり、「どんな課題を解決するか」「どんな価値を生むか」にフォーカスできる人材が、次の10年、20年で主役になります。

技術トレンド、特にAI／IoT／クラウド／グローバル開発の潮流は、日本・ベトナムを含むグローバルなITエンジニア・技術企業にとって大きな転換点です。 この転換を「乗り遅れるリスク」だけで捉えるのではなく、「新しい機会を掴むチャンス」だと捉えることが重要です。 日本とベトナム、そして世界を舞台に活動するエンジニアとして、技術を磨き、語学を磨き、価値を創る力を磨いていきましょう。