W字モデルは、顧客の興味が上がり下がり、再び上昇する過程を可視化するマーケティングフレームワークであり、特にIT・SaaS領域での購買行動を理解するうえで極めて有効です。単なる認知から購入までの直線的なプロセスではなく、導入前の不安や比較検討の段階、組織内での意思決定の揺れを前提とすることで、顧客心理をより現実的に捉えられます。実際にSaaSプロジェクト管理ツールの導入検討では、最初の期待、迷い、再評価、納得といった波を描き、各段階に応じた情報提供やサポートが成約率に大きく影響することが確認されています。
1. W字モデルとは何か

W字モデルは、顧客の興味が 一度上がり、下がり、再び上がる という動きを、Wの形で表した購買モデルです。
顧客行動が直線的に進むと仮定したAIDMAやAARRRとは異なり、このモデルは、意思決定が段階的ではなく 「揺らぎ」や「立ち止まり」を伴うことを前提にしています。
特にIT・SaaSのように情報量が多く、比較軸が複雑で、組織内合意が必要な商材では、顧客の理解は直線的に進みません。W字モデルは、この “複雑な現実” を丁寧に可視化したフレームワークと言えます。
2. なぜIT・SaaS領域でW字モデルの重要性が増すのか
ITやSaaSは、ユーザーが導入前に抱く不安や疑問が他業界に比べて圧倒的に多い領域です。 その理由をいくつか挙げます。
・無形商材であるため、使用後のイメージが掴みにくい
SaaSは「使ってみないと分からない」部分が多く、想像の幅が大きく揺れます。
・導入に関わるステークホルダーが多い
現場担当者、マネージャー、情報システム部、経営層など、各層が異なる判断軸を持っています。 そのため、興味の波形は組織内で複数回発生します。
・比較対象が多く、差別化が理解されにくい
SaaS市場はどのカテゴリもプレイヤー数が多く、違いが直感的に把握しづらい傾向があります。
・導入後の運用負荷への懸念が強い
コストだけでなく、社内浸透・データ移行・セキュリティなど不安要素が多いため、再評価が必ず発生します。
これらの特性により、SaaSの購買行動は自然と「期待 → 不安 → 納得」の波を描き、まさにW型のプロセスをたどるのです。
3. SaaS業界の実例で読み解くW字モデルの構造
ここでは実務でよく見られる “典型的なW字の動き” を、プロジェクト管理SaaSの導入検討を例に解説します。
・認知:存在を知る段階
広告やSNS、オウンドメディア記事を通じて「こうしたツールがあるのか」と認識する。
・最初の興味上昇:期待が膨らむ時期
機能ページやデモ動画を見て「これなら課題が解決しそうだ」と期待が高まる。
資料請求や無料トライアルが起こりやすい、最初のピーク。
・興味下降:不安と疑問が強まる局面
実際に操作すると「本当に現場で使えるか」「既存フローと合うか」「コストに対する納得はあるか」など迷いが発生する。
SaaSで最も離脱が起こるポイントがここ。
・再上昇:理解が具体化する段階
事例、運用プロセス、料金の根拠を理解し、導入後のイメージが鮮明になる。
現場と管理者の視点が一致し始める時期。
・購入・契約:納得感に基づく意思決定
複数の不安を乗り越え、最終的な導入に至る。この段階は感情ではなく「合理的な納得」による安定した決断となる。
ここで重要なのは、興味が下がるフェーズこそ、最も深く顧客を理解できる瞬間だということです。
4. 顧客心理の揺れを捉えるためのマーケティング設計
W字モデルを実務に落とし込むには、顧客がどの「山」や「谷」にいるのかを見極め、それぞれに適した支援を行う必要があります。
・最初の興味を高める段階
顧客はまだ表面的な理解しかない。専門用語よりも、課題との関連を直感的に示すことが大切。
例:課題起点の記事、効果を分かりやすく示すLP
・興味が下降する段階
ここは顧客の内側で「本音の疑問」が生まれる瞬間。丁寧に不安を拾い、実務レベルの情報を補う必要がある。
例:よくある失敗例、具体的な導入プロセス、データ移行の詳細
・最終検討・再上昇フェーズ
顧客は合理的な判断を求めている。定量的な情報、導入効果、コスト根拠が重要。
例:ROIシミュレーション、導入企業の運用フロー、比較資料
SaaSの意思決定は、感覚ではなく積み上げ型で行われるため、 谷を埋める情報設計が最も効果を生む領域です。
W字モデルを活用することで、IT・SaaS企業は顧客の「揺れ」を前提にした情報設計や施策を打てるようになり、単なる興味喚起ではなく、迷いや疑問の解消を通じて確信を持った意思決定を促せます。顧客が一度下がる瞬間を無視せず丁寧に支援することで、導入後の満足度や信頼感も高まり、サービスの長期的な成長につながるのです。つまり、W字モデルは現代の複雑な購買プロセスにおいて、顧客理解の深さと成果を両立させるための不可欠な指針と言えます。
著者: Trang Admin
キーワード: W字モデル, SaaSマーケティング, 顧客行動モデル, ITマーケティング, カスタマージャーニー, 意思決定プロセス
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