1. 金融業界：Excel活用とセキュリティ要件で使い分け

金融の現場では、日々膨大なデータを扱いながら、スピードと正確さの両立が求められます。そこで、日常業務の中で最も使われているのがVBAによるExcelマクロの活用です。

たとえば、マーケットデータの取得・整形、日報・週報の自動生成、複数部署からのデータ集計などは、VBAを用いることで大幅な時短と人的ミスの削減が可能になります。

しかし、財務情報や顧客データなど機密性が高く、セキュリティ要件の厳しい業務では、VBAでは対応しきれない場面もあります。

このようなケースでは、WindowsフォームやWPFを利用したVB.NETの業務アプリケーションが導入され、ログ管理・アクセス制御・暗号化などの堅牢な仕組みを実現しています。

実例：

・都内の証券会社では、アナリスト用のレポート自動作成ツールをVBAで構築し、作業時間を従来の1/5に短縮。

・地方銀行では、融資審査の事前チェックをVB.NETでシステム化し、属人的判断を排除。

2. 製造業：現場とシステム、異なるニーズを満たす両者

製造業は、「生産現場」と「管理部門」で求められるツールの性質が大きく異なります。

現場では、入力の手間を最小限に抑え、使いやすさを重視したツールが好まれます。このような用途では、VBAを使ったExcelベースの作業日報や品質チェックリストが多く活用されています。

一方で、生産設備との連携やセンサー情報の収集・解析、在庫管理システムのような外部システムやハードウェアと連携する用途では、VBの出番です。 特にVB.NETは、シリアル通信や外部DLLの取り込みにも対応しており、制御系や自動化ラインの中枢システム構築に適しています。

実例：

・電子部品メーカーでは、検査装置と連動したVB.NETアプリを導入し、不良検出率が20%以上改善。

・食品製造業では、現場スタッフがVBAで作成した原材料入力ツールにより、入力ミスを大幅に削減。

3. 教育業界：非エンジニア向けと管理業務で最適化

教育現場においては、教職員が自ら業務改善を図るケースが多く見られます。そのため、プログラミングの専門知識が不要で扱いやすいVBAが重宝されています。

特に、成績表や出席簿、教材作成のテンプレートなど、繰り返しの多い作業を自動化するためのツールは、Excel + VBAという組み合わせで多く内製化されています。

一方、教育機関全体での運営管理や成績管理、履修登録などのシステムは、組織的なIT整備の一環としてVB.NETが採用されることが増えています。複数ユーザーによる同時アクセス、セキュリティの確保、データベースとの連携などが求められるため、システム開発会社がVBを用いて開発しています。

実例：

・高校教員が自作した成績計算ツール（VBA）で、学期末の集計作業が1日で完了。

・私立大学では、学生情報管理システムをVBで刷新し、ペーパーレス化と業務効率向上を実現。

5. 業界を超えた共通ポイントと導入時の注意点

どの業界にも共通するのは、「短期的な効率化にはVBA」「長期運用や拡張にはVB」という基本方針です。

ただし、導入にあたっては以下の点に注意が必要です。

・ユーザーのITスキルレベル：現場主導での改善にはVBA、システム管理者主導ならVB。

・データの機密性と重要度：個人情報や財務データを扱うならVBを優先。

・将来的なシステム拡張の可否：VBAでは構造が複雑化すると保守が困難に。

・メンテナンス体制の有無：属人化を防ぐにはVBでの構造的開発が望ましい。

VBAとVBは、どちらかが優れているという単純な話ではなく、「どのような課題を、誰が、どの環境で解決したいのか」によって最適な選択が変わる技術です。VBAは現場主導の業務改善に即効性があり、VBはシステム基盤として長期的な運用や安全性を確保するのに適しています。業務内容やリソース、セキュリティ要件をしっかり見極め、それぞれの特性を活かした使い分けができれば、現場の生産性と業務の質は確実に向上します。