B2BやSaaS、ITサービスのマーケティングでは、資料請求やサイト訪問があっても、すぐに商談や導入につながらないケースがほとんどです。一度離脱したリードを「失注」と判断してしまうと、本来育てられたはずの機会を逃してしまいます。こうした現実に向き合うために注目されているのが、離脱と再接点を前提に設計するW字モデルです。本記事では、W字モデルを軸に、AI・チャットボット・CDPを活用したマーケティングオートメーションによって、離脱後のユーザーをどのように再育成し、検討フェーズへと自然に戻していくのかを解説します。
- 1. 1. W字モデルとは何か
- 2. 2. なぜ今、W字モデル×マーケティングオートメーションなのか
- 3. 3. W字モデルにおける「再育成」という考え方
- 3.1. 離脱は失敗ではない
- 3.2. 行動データが次の価値を生む
- 4. 4. AIを活用したW字モデルの実践
- 4.3. 行動予測とスコアリングの高度化
- 4.4. コンテンツ配信の自動最適化
- 5. 5. チャットボットが担うW字モデルの接点設計
- 5.5. 即時対応と継続的関係構築
- 5.6. ナーチャリングの自動化
- 6. 6. CDPによるデータ統合とW字モデルの可視化
- 6.7. 分断されたデータの統合
- 6.8. 顧客理解を深めるための基盤づくり
- 7. 7. W字モデル×MAで成果を出すための設計ポイント
- 7.9. シナリオ設計の考え方
- 7.10. KPIと評価軸の置き方
1. W字モデルとは何か
― 従来ファネルとの決定的な違い
マーケティングの現場では、長年「ファネル型」が当たり前のように使われてきました。認知 → 興味 → 比較 → 購入という一直線の流れです。
しかし、B2BやSaaS、ITサービスの検討プロセスは、もはや直線ではありません。
資料請求をした後に離脱し、数か月後に再訪問する。
比較検討中に社内事情で一度止まり、別のタイミングで再検討が始まる。
こうした現実に即した考え方がW字モデルです。
W字モデルでは、「接点 → 離脱 → 再接点 → 再評価 → 再検討」という波打つような行動を前提とします。
離脱は失敗ではなく、次の価値提供の起点である。これがW字モデルの本質です。
2. なぜ今、W字モデル×マーケティングオートメーションなのか

B2Bマーケティングにおいて、以下の課題を感じている企業は少なくありません。
・資料請求後の反応が続かない
・商談化までのリード育成が属人化している
・MAを導入したが、シナリオが機能していない
・データはあるが、活かしきれていない
これらの原因の多くは、「一度離脱したリードをどう扱うか」という視点が欠けている点にあります。
W字モデルは、マーケティングオートメーションと非常に相性が良い構造です。
なぜならMAは、
・行動データの蓄積
・タイミングに応じた自動配信
・スコアリングによる温度感の把握
を得意としているからです。
W字モデルの思想をMAに落とし込むことで、離脱後のリードを自然に再育成する仕組みが成立します。
3. W字モデルにおける「再育成」という考え方
離脱は失敗ではない
資料請求後に反応がなくなる。これはB2Bでは「よくあること」です。
重要なのは、「なぜ今は検討できないのか」「次に動くとしたらいつか」を前提に設計できているかどうかです。
W字モデルでは、離脱をネガティブに捉えません。
検討フェーズが一時停止した状態として扱います。
行動データが次の価値を生む
再育成の鍵は、過去の行動データです。
・どの資料をダウンロードしたか
・どのページを読んだか
・どのタイミングで離脱したか
これらの情報は、「次に何を提供すべきか」を示すヒントになります。
W字モデルでは、過去の行動を起点に、次の接点を設計することが基本です。
4. AIを活用したW字モデルの実践
行動予測とスコアリングの高度化
AIを活用することで、従来の単純なスコアリングから一歩進んだ判断が可能になります。
・再訪問しやすいタイミングの予測
・コンバージョン確率の変化検知
・興味関心の再分類
これにより、「まだ早い営業アプローチ」「本来送るべきでないコンテンツ配信」を減らすことができます。
コンテンツ配信の自動最適化
W字モデルでは、再接点時の体験が非常に重要です。
AIを活用すれば、
・業種別
・役職別
・過去行動別
に応じたコンテンツを、自動で最適化できます。
結果として、「久しぶりに見たが、ちょうど知りたかった内容だった」という体験を生み出しやすくなります。
5. チャットボットが担うW字モデルの接点設計
即時対応と継続的関係構築
再訪問ユーザーは、必ずしも問い合わせフォームを使いません。
そこで重要になるのがチャットボットです。
・資料の再案内
・導入事例の提示
・よくある質問への即時回答
これらを即座に提供することで、検討の再スタートを自然に後押しできます。
ナーチャリングの自動化
チャットボットは「問い合わせ対応ツール」ではありません。
W字モデルでは、ナーチャリングの一部として機能します。
会話ログをMAやCDPと連携することで、次のメール配信やコンテンツ提案にも活かせます。
6. CDPによるデータ統合とW字モデルの可視化
分断されたデータの統合
B2B企業では、以下のようなデータ分断が起きがちです。
・MA
・CRM
・Webアクセス
・チャット履歴
CDPはこれらを統合し、一人の顧客として可視化します。
顧客理解を深めるための基盤づくり
W字モデルは「行動の変化」を見るモデルです。
CDPがあることで、
・どこで離脱し
・どこで再接点が生まれ
・どの施策が再検討を促したか
を把握しやすくなります。
これは、資料請求数よりも、検討継続率を高める視点につながります。
7. W字モデル×MAで成果を出すための設計ポイント
シナリオ設計の考え方
W字モデルでは、「次に購入させる」ではなく「次に関係をつなぐ」ことを目的にします。
・情報提供の間隔
・接点の種類
・売り込みの強さ
これらを抑えたシナリオ設計が重要です。
KPIと評価軸の置き方
W字モデルでは、即時CVだけをKPIにすると失敗します。
・再訪問率
・コンテンツ接触回数
・再検討フェーズへの移行率
といった指標を重視することで、MAの本来の価値が見えてきます。
W字モデルは、「今すぐ導入しないユーザー」を切り捨てず、検討の波に寄り添いながら関係を継続するための考え方です。AIによる行動予測、チャットボットによる継続的な接点、CDPによるデータ統合をマーケティングオートメーションと組み合わせることで、離脱は次の機会へと変わります。資料請求や比較検討が長期化しやすいB2B・SaaS・IT企業にとって、W字モデルは短期的なCVだけでなく、将来の商談創出とLTV向上を支える重要なマーケティング基盤となるでしょう。
著者: Trang Admin
キーワード: W字モデル, マーケティングオートメーション, MA, AIマーケティング, チャットボット, CDP, リードナーチャリング, 再育成, カスタマージャーニー, データ活用
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